学生研究 指導者の立場から
広い視野からの問題把握
上野 宏郁
1
1金沢大学医学部産婦人科
pp.418
発行日 1976年7月25日
Published Date 1976/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205072
- 有料閲覧
- 文献概要
この論文は,妊産婦の衣服に対して,より理想的なものを追求するため研究されたもので,そのためか広い視野から問題をとらえようと努力されている。すなわち,産科外来での実態調査や妊産婦に対するアンケート調査を行っていることに加えて,一般的な妊産婦に望ましい条件や診療者側からの希望条件などを考慮している点である。その結果を加味して,マタニティドレスを考案している。形は一見して見慣れたもののようであるが,妊産婦側の希望と診療者側の希望とがみごとに取り入れられている。しかし現段階では著者らが述べているごとく,あくまで設計図の段階にすぎないので,今後実際に製作して使用してもらい,その成績を基にして更に広く調査研究を進めてもらいたいものである。そうすれば当然下着や褥着にまでおよばざるを得なくなるであろうし,服装デザイナーやプロの製作者との意見の交換も必要となってくるであろう。
なお,本論文の結語にある著者らの考え,つまり一見して妊婦と判るマタニティドレスを着せて歩かすことには私も大いに賛成である。より良き子孫を生もうとしている妊産婦が,自ら妊娠していることを示し,自覚すること,それらに周囲の人々の暖かい援助や協力が差しのべられることは,母性保護の上からも望ましいことであり,更に着る者にとっても楽しく,診療上にも便利とすれば,一石三鳥と言えるだろう。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.