オピニオン
視野を広く保てるか?―国際協力の現場から
工藤 芳子
1
1岡山理科大学理学部臨床生命科学科
pp.227
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543100360
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開発途上国での医療協力は,私のライフワークである.実際に“途上国”と呼ばれる国々へ出向き,臨床検査室の活性化,臨床検査の適正利用,臨床検査技師の育成などの問題を同国のスタッフとともに検討し,対策を立案し,実施へと導く.多くの途上国では「臨床検査技師」の院内または医療界での地位は低く,発言権はないに等しい.つまり「臨床検査を有効利用するための医療システムを立案する立場にない」のである.発言する立場にない者は会議のための資料を作る必要もないので客観的な現状分析を行わず,したがって対策も立てることができない.
現地到着後の私の最初の仕事は,限られた記録とスタッフとの会話のなかから得られる情報による現状分析である.しかしながら,国家保健政策や院内の疾病傾向・財務情報などを検査室スタッフから得ることは難しいので,病院内,または保健省の担当部局へ問い合わせることになる.また,この作業と並行して行わなければならないのは,「本気で検査室(現状)を改善しよう」とスタッフ自身に自覚してもらうことである.長く不満足な環境に居ると「文句」は出ても「提案」は出てこない.まずは文句を全部いってもらい,その後「では,どのような検査室にしたいのか?」をできるだけ具体的に表現してもらい,それを病院長をはじめとする“意思決定機関へ提案する場を設定する”のが私の仕事だ.
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