学生研究 指導者の立場から
「乳汁分泌に関与する諸因子について」の研究を指導して
青野 敏博
1
1大阪大学医学部産婦人科学教室
pp.412-413
発行日 1976年7月25日
Published Date 1976/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205070
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生殖生理学の研究の進歩に伴い,乳汁分泌のメカニズムにもしだいに焦点が当てられるようになってきた。乳汁分泌の良否は産科の日常臨床上,切実な問題であるにもかかわらず,その原因に関する研究は意外と少ない。その理由は,乳汁分泌のメカニズムに関する研究のためには授乳婦人の協力を必要とし,採血などについても研究者側の多大の労力を要するためであろう。今回褥婦の皆様の理解と,東大阪市立病院の絶大なご協力を得,かつ学生の日夜を分かたぬ努力の3拍子が揃って本研究が施行できたものである。
本研究では乳汁分泌に関する可能性のある因子として,1)身体的因子,2)精神的因子,3)社会的因子,4)内分泌因子,をとりあげているが,考えられる諸因子はほぼ総て網羅したものといえよう。検査の方法についてみると,各々の検査にできるだけ客観性を持たせるため,種々の計測値を求め統計的処理を行っており,精神的因子についても心理テストを導入して異常の有無を数量的に評価するように努力している。乳房の大きさの計測には,当時は2つの測定値からコンピューター処理により近似式を使って体積を求めたが,その後容器中の水の排出法により測定が可能なことを知り,現在追試を行っている。なお血中プロラクチンの定量は米国NIHより提供を受けた測定キットを用い,産婦人科学教室でラジオイムノアッセイで行った。その測定法の詳細は塩路らがすでに発表している。
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