ケース・レポートを読んで 生殖生理学の立場から
不妊症の原因と治療法
鈴木 秋悦
1
1慶応義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.452-455
発行日 1975年9月25日
Published Date 1975/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204915
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1.はじめに
近年,生殖(リプロダクション)のメカニズムに関する研究が国際的にも大きくクローズアップされてきており,従来,不明とされていた妊娠の成立機序も,しだいに明らかにされつつある。しかし,排卵から受精,着床に至る一連の生殖機構の中には,なお多くの未解決の問題点が含まれている。
例えば,その中の2,3の例をあげると,卵巣の中で成熟分裂していく卵子をコントロールしている因子はなんであるか,あるいは,なぜ,多くの場合,無数に含まれる卵子の中で1個の卵子しか排卵していかないのか。また,精子についても,1回に腟内に射精される億単位の精子数の中で,なぜ1個の精子しか卵子の中に侵入していかないのか,そして,卵子の外側の膜は,1個以上の精子が入らないように,いかなる働きをしているのかなど,枚挙にいとまがないくらいに多くの問題が未解決のまま残されている。
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