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胎生期の発生の途中においてMuller氏管の癒合障害や発育障害によってできる子宮の奇形にはいろいろな種類がある。だが臨床的に理解しやすく広く利用されているのはJarcho(1946)の分類であろう。これでは1)重複子宮,2)双角双頸子宮,3)双角単頸子宮,4)中隔子宮,5)不全中隔子宮,6)弓状子宮,7)単角子宮の七つに分.けている。診断は1),2)のように腟および子宮腔部が2個存在するものでは容易であるが,その他のものにおいては,手術時や子宮卵管造影術などの検診のとき,妊娠・分娩その他のときに偶然に発見されるものもある。しかし未発見のままになっている例もかなり多いので鉢ないかと思われる。子宮奇形の子宮腔像は子宮造影の所見が示すように,特異な形を呈することはよく知られている。妊娠時の卵膜腔の形も当然それと類似の形を示すべきである。事実,私はこの独特な卵膜腔像を見て子宮奇形を疑い,非妊時に子宮造影を行ない,子宮奇形の診断を下した経験をたくさんもっている。ここではそういった例の卵膜腔および胎盤像を示すことにする。
子宮奇形の中で比較的多いのは双角単頸子宮中隔子宮も含む)であろう。図21-1から図21-8までは種々の程度双角単頸子宮の例を軽い順に並べてみた。図21-5は最も定形的というべき双角単頸の例で,それが示す最も特徴的な像として,その卵膜腔像はみごとな心臓形を呈している。この例の子宮卵管造影術による子宮像は図に示す通り子宮体部の大部分が二つに分かれ,両子宮角はほぼ同じ大きさ,同じ形で左右対称的であるので,卵摸腔の形もそれと同様で心臓形を呈することになる。この例では中央の切れ込みが深く,横径が長く,また胎盤は片方の子宮に偏在し,中央線を越えて他側の子宮に及んでいない。
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