連載 Medical Scope
女性の膀胱炎
島田 信宏
1
1北里大学産婦人科
pp.61
発行日 1973年10月1日
Published Date 1973/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204596
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産科の外来には,尿意頻数,排尿後疼痛などを主訴とする膀胱炎Cystitisの症例が大変多くみられます。皆さんも,この問題でよく相談をうけることがあるでしょう。ことに,妊婦の場合は,抗生物質をのんでも妊娠している胎児に影響がないかどうかを心配する人が多く,その説得にも骨がおれるものです。今回は,この女性の膀胱炎についての最近の話題を追ってみましょう。
女性の膀胱炎は,膀胱の「風邪ひき」だといわれるようにポピューラーな疾患ですが,外国では1年間に結婚している女性の2.6%が膀胱炎になるといわれています。この膀胱炎は,20歳以後の発症がほとんどであることから,その発生原因に性生活が関係していることは明きらかです。有名なことばに「honeymoon cystitis」ハネムーン膀胱炎という,何ともロマンティックではない俗名があります。これも,ハネムーンに行って帰ってくる頃に膀胱炎になる女性が多いのでつけられた名前です。これは性生活が始まると,外陰部や会陰部に付着していた大腸菌群の一部が,尿道を通して膀胱に進入して膀胱炎をおこすものだと解説されています。男性の場合は尿道が長いので症状が出ることは少なく,女性は尿道が短いので,すぐ膀胱炎になるということはもうよくご存知でしょう。このように,女性の膀胱炎のほとんどは,性生活の折に膀胱に侵入した大腸菌のためにおこるのです。
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