連載 ほん
"反乱"の華々しいオンパレード
荒岩 孝昭
pp.56
発行日 1972年9月1日
Published Date 1972/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204408
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本を読みながらたえずその本の標題と内容の関係について思いをめぐらせ,想像力をたくましうするというのも読書の愉しみのひとつであろう。
これについて著者はカバー裏に,登場人物一人一人の反乱といとも簡単に説明しているのが,そうした説明があるがためかえって,ああそうですかと容易に引き下りたくない心持ちになるのがいかんともしがたい。その理由も多分,この小説の語り口がひとつの様式を伝えながらも,同時にその様式との軋轢を孕みながら浮び上がってくる現実が,様式と幾重にも錯綜,交錯し,その種の説明は作者一流の韜晦術ではないかとふと考え,そっちがその気なら読者としてもとことん裏の裏までさぐりを入れ,その意味するところを発きださずにはおくまいぞという心づもりにもなる。
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