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2019年の大晦日、中国・武漢の華南海鮮城(海鮮卸売市場)に関連すると推測される「原因不明のウイルス性肺炎」の症例が、周辺医療機関で約30例発生していることが発表された。その後、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と命名された新興感染症は瞬く間に全世界に拡散し、2020年1月30日には世界保健機関(World Health Organization:WHO)のテドロス事務局長が、『国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)』に相当することを発表した。世界各国で歴史上例を見ないロックダウンが実施され、まさに全世界規模の感染症パンデミックが発生したのは、今から3年半前であった。
当時、筆者は自施設での患者診療やマネジメント業務に追われながら、岡山市保健所の医療コーディネーター、岡山県庁コロナ対策室の岡山県クラスター対策班の感染管理医師として活動するなど、多忙を極めていた。そんな中、1年ほど前から着々と準備をしていた「渡航ワクチン外来」をスタートしたのが2020年9月であった。読者の皆さんもご存じのように、当時は海外往来が極めて難しくなり、海外から来日する外国人(インバウンド)、日本から海外に行く人(アウトバウンド)はゼロと言っても過言ではない状態であった。「『渡航ワクチン外来』なんて、何のために始めるの?」と直接聞く人はあまりいなかったが、心中では筆者が始めた「渡航ワクチン外来」の意義を訝しく思っていた人もいたであろう。当時は海外渡航に際し「PCR陰性証明書」の提示を要するケースが多く、「渡航ワクチン外来」の機能はこの「PCR陰性証明書」を発行することと勘違いしていた人もいたことと思う。
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