私たちの法律第2回
婚姻の障害
遠藤 順子
pp.50-53
発行日 1971年5月1日
Published Date 1971/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204134
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「おんな」故の再婚禁止期間
〈設例3〉
箸にも棒にもかからない夫との生活にあいそをつかせていたA子さんはある会社へパートタイマーとして働きに出ていたが,上司のB氏と親しくなりB氏はA子さんの今までの生活を理解したうえで結婚の約束をしてくれた。そこでA子さんは夫に離婚の申出をしたところ意外にも夫はあっさりと協議離婚に応じた。A子さんはすぐにB氏との婚姻の届出をすることができるだろうか。A子さんとその夫は離婚前一年あまり性的関係を絶っていた。
先月お話しした「婚姻適令」も婚姻障害事由のひとつでしたが,女性だけに課せられる障害事由として唯一のものがこの再婚禁止期間です。民法は第733条第1項で,「女は,前婚の解消または取消の日から6か月を経過した後でなければ再婚することができない」と規定しました。そしてこの条文にいう「前婚の解消」とは離婚の場合と死別の場合の両方を含みます。したがってこの設例のA子さんも離婚届後6か月経ないとB氏との婚姻届を提出できません.ではこの差別の根拠はいったい何なのでしょう。昔は「ひとたび嫁した女は婚姻が解消してもあまり早く再婚すべきではない」という漠然とした道徳観念に基づくしめつけがかなり広く巷に行なわれていました。民法第733条がこのような観念に立脚したものでないことは言うまでもないことで,この条文はもっぱら子供の父親の確定に困難を生じないようにとの配慮によったものです。
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