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分娩時の出血をいかに少なくするかということについては,現在までに多くの検討がなされてきましたが,今日の結論的な考え方は分娩第3期を短かくすること,これが出血量を少なくする最大のポイントのようです.そして,そのためには胎児娩出後に子宮収縮剤を投与するのがよく,胎盤の娩出法は積極的に早く剥離させる方法をとることが行なわれている.しかし,以前から用いられているクレーデの圧出法は反対に出血量が多くなるとして欧米では否定的で行なっていない.そして,これにかわる方法としてブランク・アンドリュース法というのが用いられている.これは,一方の手で臍帯をつかんで胎盤をひっぱり,他方の手で子宮の前面を腹壁からもちあげるように,子宮底を上へつりあげるようにする方法で,早く胎盤が剥離し,しかも出血は少ないといわれています.また,欧米では積極的に胎盤娩出後は手を子宮内に入れて,胎盤や卵膜の残存をなくす方法をとっているところが多くなっているようです.
産科出血の主要因子の1つに低線維素原血症がありますが,この病気も以前いわれたように早期剥離と関係があるのですが,妊産婦が低フィブリノーゲン血症になるかどうかを検査するのに血沈をとっておくとよいのですそして,血沈は一般に妊婦は亢進するのですが,低フィブリノーゲン血症では1時間20以下という低い値を示してきます.このような症例を注意すればよいので一般に使われるべき検査といえましょう.この低線維素原血症の治療にはもちろん,フィブリノーゲン(線維素原)を用いるのですが,これだけではだめなのです.というのは産科的低線維素原血症では他の血液凝固因子を欠乏していることが多いので,新鮮血を輸血することがよいことになります.線維素原と新鮮血を50%つつ投与すべきだと考えられています.
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