特集 全国助産婦学校学生研究
—鹿児島大学医学部付属助産婦学校—妊・褥婦の愁訴について
脇田 ヨシ子
,
中野 美代子
,
橋口 正子
,
松下 三枝
pp.120-124
発行日 1969年6月1日
Published Date 1969/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203773
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はじめに
私達の身体が円滑に機能を営むためには,内分泌系と自律神経系がはたしている役割は大きく,相互の密接な関係は古くから注目されています.そしてそのいずれかに変調があれば,他方にも何らかの影響があるといわれています.一方最近の心身医学の進歩にともなって,これらの内分泌系や自律神経系の機能は,外界からの刺激や,心理的要因によって大きく左右されることも指摘されるようになってきました.
ことに婦人の思春期,去勢後,月経時,妊娠時,産褥,更年期などでは,性腺機能の変調に加えて,種々の精神的変動がおこりやすいためか,器質的変化がほとんど認められないのに,いろいろな自律神経機能失調様の,全身性,神経性,循環性,胃腸性の強い愁訴,すなわち不定愁訴を訴えがちとなりますので,とくにこの間の関係が注目されています.事実助産婦の取扱う妊・産・褥婦を観察しました場合でも,もちろん内分泌系の変調もありますが,妊娠中は児の健康,分娩前後の夫のこと,家庭環境での不安,分娩前後の健康に対する不安など,分娩時は肉体的労作に加えて分娩に対する恐怖など,さらに分娩後は大役をはたした安心感など,情緒の起伏がかなり著明でありますためか,これらの群で不定愁訴を訴える例が多いことはよく経験するところであります.またなかには分娩後の愁訴がいったん消失したあと数週の期間をおいて再び強い更年期障害症様の愁訴を訴えるような人もいます.
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