連載
百二十年前の育児法(その3)
興梠 忠夫
1
1母子愛育会福祉部
pp.59-63
発行日 1968年11月1日
Published Date 1968/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203660
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始乳(ちちをつける)
分娩後2,3時間たって乳房がまだ張らない前に乳を吸わせること.そうすれば乳脈が早く通じその上,児も吸いやすいからである.産後乳つけするのをひまどると,乳房がふくらんで児が乳汁を吸い出すことができず,その怒張のために乳熱を発し,母子ともにためにならないからである.
初めに出る乳は大便と通ずる性質があって,よく黒屎を下す.これは児の胎毒を下すための自然の妙機であって,その上極めて薄いのは,新生児の微弱な腹にふさわしく,ほどよく消化させるためである.児が次第に日だちして胃腸の働きが健全であれば,乳もおのずから濃くなって,その胃に応じて栄養となる.これもまた天理の至妙というべきである.もっとも乳頭をよく拭いて,黒い垢をとって児に与えること.富貴の家では大概この仕方を用いないで,産後の初乳は児に害があるといって,ことさらに乳母の乳を初めにのませてかえって早死させることが少なくない.これは天理に反するからである.
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