分娩体験記
精神予防性無痛分娩を試みて
梅本 洋子
1
1北海道立衛生学院
pp.42-43
発行日 1966年11月1日
Published Date 1966/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203295
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□□苦しかったつわりの期間
目を閉じると,10カ月の妊娠中の経過がいろいろと想い出される.春まだ浅い頃,異常に食欲があり,胃に負担がかかるのにと思いながらも,もりもりと食べた.その後なんとなく胃の調子が悪く,常にむかむかしているような状態の日が続いた.以前にも胃を悪くしてこんな状態の時があったので,たいして気にもとめず放置しておいた.でこぼこ道を3時間以上もバスに揺られたり,スキーに乗ったり,今思えば背すじが寒くなるような行動を平気でやっていたのだ.助産婦でありながら妊娠と気づかずに……基礎体温表にはっきりと高温層を読みとれるような結果が出ていなかった.胃が悪いと思っているうちに,だんだんと嘔吐をくり返すようになり,ご飯の臭いがたまらなくいやだった.そんな状態になってからもしや?と思いあたったのだから助産婦失格だ.
診察を受けなければと思いながらも産婦人科の門をくぐるのがいやで躊躇していた.やっと意を決して行ったのだけれど,最初の日は玄関から帰ってきてしまった.自分が実際に患者になろうとは考えてもみなかったので…….幾度もためらった後,とうとう姑につれられて診察を受けた.妊娠3カ月はじめと診断される.子供が欲しかっただけに,嬉しかった.急に自分をいたわるような気持になり,歩くにもお腹をかばったりして笑われた.つわりはある程度は精神的なものだなどと指導をしていたが,私も精神の持ち方で克服してゆこうと努力してみた.
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