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誰にでも出来る無痛分娩—特に精神予防性無痛分娩について その1
奥村 裕正
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1日赤産院婦人科
pp.29-31
発行日 1962年5月1日
Published Date 1962/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202333
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概説
無痛分娩は今から100年前英国で始められ,はじめはもつぱらエーテルとクロロホルムのガス麻酔いわゆる薬物による無痛分娩でした.人間のお産に麻酔を使用するのは,神をけがすものであると,発明者イギリスの産科医ジェムス・ヤング・シンプソンは,異端者であると,始めの間は宗教団体からずいぶん非難圧迫されましたが,有名なビクトリヤ女王が,1853年第8児レオポルド王子をお産みになる時,クロロホルムが用いられ,女王に大変喜ばれてから,麻酔分娩の社会的評価が非常に高くなり,その後次第に発達し,各種の麻酔方法が発見され欧洲から米国に移り,現在の状態に至りました.助産婦のほとんどいない米国での無痛分娩の発達はよく知られている事柄ですが,欧洲でも,イギリス,フランス,ドイツ,イタリー,スェーデン,ノルウェーなどで助産婦がガス麻酔を自宅分娩に応用していることを見落してはなりません.無痛分娩は目下世界の産科の一つの傾向のように思われます.いつの時代でも,お産の痛みには,人種民族による差異はないはずです.ただ文化が進み,安易な生活になれた婦人が,野性の強い未開人のお産の時より,痛みを感じることは考えられましよう.ですから現在文化の低い民族では全く昔のままのお産が行なわれ,文化の進んだ国では,あの手この手つくしての無痛分娩が行なわれています.でき得る事ならお産の痛みを何とか軽くしてもらいたいのが,あらゆる産婦の心からの願であり、人情だと思います.
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