らいぶらりい
—ゲーテ著 前田敬作訳—若きウェルテルの悩み
杉浦 衛
pp.46-47
発行日 1966年11月1日
Published Date 1966/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203296
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「図抜けた完全な美人ではないが,彼女は人が美しい娘というものです.私には彼女ほど心に叶った女はまだありませんでした.彼女はまた他の人々にも気に入られていてその中には死ぬほで惚れている人々もあります.私はそれらの人々に打勝ったのです.かつ彼女は老人にも若い者にも一般に気受けがよいので,私はまだ自分の選択について少しの非難も耳にしません.他の女を選んだなら,きっとそれを経験したのでししょうが.懐しげな,人の心を引入れるような怡気のある顔面の表情が,私にとっては彼女の最大の外的な美しさです.その上彼女は理智があり,楽しい気質で,話好きで,よい思いつきを持っています.忘れてならぬことは,彼女がすぐれた心を持っていることです.彼女は高尚で,人を愛し,親切で寛大です.」
ロッテ(シャルロッテ・ブッフ)は15歳のときから,ヨハン・クリステイアン・ケストネル(アルベルト)と婚約を結んでいました.1772年6月9日,ゲーテにとって,忘れがたい日となったのは,小説にある通り,若い友人たちによって催された舞踏会ではじめて会ったロッテとの出会いでありました.許嫁ケストネルがおくれたため,ゲーテは先にロッテの家へ行きました.家は町の真中にあって(小説では森のなか)大勢の子供たちに取巻かれて夕食をしていました.このときにはまだ婚約のことは知らなかったのです.ケストネルは遅くなってやってきました.(小説とはちがっています)
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