分娩体験記
激しい陣痛のあとの安らかな喜び
及川 千代子
1
1結核研究所付属療養所
pp.42-43
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203208
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順調だったオリンピック記念の長男
昭和39年,年があけると,オリンピック開幕の興奮がいよいよたかまっておりました.私たちは結婚して3年目,親しい友だちに会って「赤ちゃんはまだ?」ときかれるたびに,「そうね,来年あたりオリンピック記念に,生んでおこうかしら」などと,冗談半分に話しておりましたが,その年本当にそれが,冗談ではなくなりました.39年3月,生理がしばらくなかったのと,身体の調子がどことなく悪いので,近くの産婦人科をたずねました.診察の結果,やはり妊娠3カ月とのことでした.もう冬から春になろうとしている季節でしたし,陽ざしも暖かく,私は道々とても満たされた幸せな気持でした.急にお腹に大切なものをかかえている気持で,いつもより車や自転車のゆきかう中を気をつけて歩いた記憶がしています.
それからの日々,私は相変らず勤務を続けましたが,アパートから職場まで,歩いて7分くらいの距離のせいもあってか,母子ともに順調にすごすことができました.予定日は10月10日で,夏を越すことになりましたが,食欲も別段おとろえることもなく皆さんに驚かれるほど元気でした.私たちは共稼ぎの2人きりの生活でしたから,疲れた時には,誰にも気がねなくいつでも横になれましたし,仕事から帰っても,ひと休みして,疲れがなおってから夕飯のしたくにとりかかりました.できるだけ薬ものみたくないと思い,病気にはかからぬように注意もいたしました.
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