Medical Box
胎児赤芽球症の新しい問題
高橋 隆一
1
1慶応大学医学部血液学研究室
pp.34-35
発行日 1965年4月1日
Published Date 1965/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202948
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胎児赤芽球症は,母親と胎児の血液型が不適合のためにおこる疾患で,胎児期または新生児期に著明な溶血性貧血をおこすものです.溶血性貧血であるので黄疸,貧血,肝脾腫,全身の浮腫等を認め,末梢血液中に多数の幼若赤血球が出現するのでこの名がついているのです.いわゆる核黄疸によって死亡することが多いのですが,過去の統計をみるとその死亡率は70乃至80%の高率です.
本症が母親と胎児の血泌型不適合によることは前にも述べた通りですが,最も有名なのはRh型不適合です.すなわち,父親がRh(+),母親がRh(-)で,胎児がRh(+)ですと,胎児のRh(+)の血液型物質が母親の循環血中に移行します.母親は,Rh(-)ですからRh(+)の血液型物質に対して抗体を生じます.母親体内で生じた抗Rh抗体は胎児に移行して,胎児の赤血球と反応して,そこで溶血をおこすわけです.これまではこのように考えられていましたが,最近の多くの研究によると,胎児赤血球そのものが,胎盤を経て,母親の循環血中に移行することが明らかになりました.したがって母親の体内では移行してきた胎児赤血球に対して抗体を生ずるわけで,本症のおきかたがより具体的にわかってきました.さらにRh型ばかりでなくABO型,MN型その他の血液型の不適合によっても同じようにおきることが明らかになってきました.ただ一般的にはRh型不適合によるものが他の場合より症状が重篤で,したがって死亡率も高いようです.
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