母性保健特集講座 産褥の異常
中毒症患者に対する産後の指導
古賀 千鶴子
1
1九州大学医学部附属助産婦学校
pp.30-33
発行日 1964年10月1日
Published Date 1964/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202845
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はじめに
最近内外の多くの学者に中毒症後遺症の問題が取上げられていますが,本症が胎児および母体におよぼす影響には重大なものがあるといわれ,また最近の調査では,中毒症のうち1か月以上後遺症が続いたものの頻度は30〜60%もあるといわれております.この後遺症のうち高血圧のみを残したものは55%(44〜77%)で最も高頻度であり,高血圧+蛋白尿を残したものは20%(10〜27%),蛋白尿のみを残したものは24%であります.
これら妊娠中毒症後遺症は慢性化して本態性高血圧症に移行するともいわれ,また将来高血圧症を早期に起こす素地となるといわれております.後遺症を残したものの大部分がのちに脳出血,腎出血,腎不全などの高血圧性疾患で死亡しているといわれ,また次回妊娠時には中毒症が再発する頻度が高く(40〜50%),症状が悪化することが多く,また混合型の中毒症では常位胎盤早期剥離,早産,死産など母体および胎児に対する直接の危険性が純粋中毒症に比して非常に高いといわれております.このように後遺症の問題は母児の健康に重大な関係を有するものであります.また妊娠中毒症は妊産婦死亡原因の第1位をしめており,私ども助産婦としてもこのように危険な中毒症や,後遺症をのこすような重症中毒症にならぬよう,妊娠中の保健指導を徹底し,これを予防しなければならないと思います.ここでは妊娠中毒症後遺症を中心に述べてみたいと思います.
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