患者指導のために・2
晩期妊娠中毒症の患者指導
青木 康子
1
1日赤本部産院保健指導部
pp.68-70
発行日 1962年3月15日
Published Date 1962/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911591
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最初に
妊娠中毒症とは,一つの疾患名でなく,妊娠によっておこる一種の病的な症候群に対する総称であり,その中には妊娠悪阻,妊娠浮腫,子癇,正常位胎盤早期剥離などが含まれ,その分類も国によって異なっております。またこれらは,妊娠初期から産褥期にわたっており,たいへん広範囲にわたっております。したがってその患者指導と申しましても一括してしまうこともできませんので,ここでは妊娠後半期になって浮腫,尿蛋白が高度に現われ,血圧も上昇して,いわゆる晩期妊娠中毒症あるいは子癇前症といわれる状態となり,入院治療を要する患者の場合に限ってみたいと思います。
さて妊娠中毒症の本態については,医学界の懸命な研究努力にもかかわらず,未だに解明されず,妊卵説,胎盤説,ホルモン説など種々の学説がたてられ,その治療や看護をむずかしくしております。さらに妊娠中毒症の場合,病気を治療するだけでなく,もう一つの生命,すなわち胎児も母親と運命をともにしており,無事に分娩をすませることによって,母子ともに健康な生活を営むことができるようにしなければならないということ,また妊娠中毒症には時に後遺症があり,それが日本人の死亡原因の第一位をしめる脳出血につながる高血圧であったり,腎臓障害であるところにも重要な意味が含まれております。
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