巻頭随想
お世話になった方たち
戸川 エマ
pp.9
発行日 1964年8月1日
Published Date 1964/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202799
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「うちに帰ると,女の人ばかり4人もきているのだもの,僕はかなわないよ」と会社から帰宅した夫が,身のおきどころがないような顔をして苦笑した.昭和16年12月,上海で,私が生まれたばかりの息子と病院からアパートに帰ってきた当時のことである.
4人というのは,1人は中国人のママさん,1人はすぐ近くで日本人の看護婦会の会長さんでお産婆さんのMさん,もう1人はその会から派遣されてきているOさん,そして一番年長者は私の乳が多すぎて,すぐ乳腺炎をおこしかけるため,そのたびかけつけて下さるマッサージの人である.Mさんが赤ん坊にお湯をつかわせ,Oさんはおむつをたたんだり,私の食事を作ったり,そして私はマッサージをしてもらっているのだから,この家の主人は,せまい部屋の中でうろうろせざるを得ない.
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