グラビヤ
東京下町の未熟児センター—妊婦死亡率0をほこる哺育病院
pp.2-8
発行日 1964年4月1日
Published Date 1964/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202725
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哺育会病院(東京都台東区浅草吉野町3の7,院長,水谷佐)は,東京の下町の,ゴミゴミした一角に,お世辞にも美しいとはいえない建てものを横たえている。ところがこの病院には東京をはじめとして,関東一円から妊産婦が集まってくる。それというのは,妊産婦死亡率ゼロという実績がものを言ってのこと。「労を惜しまず,医学の原則に徹する」という水谷院長の信念のもとに,医師と助産婦のチーム・ワークがみごとに実行されている。ベット数は32床,助産婦7人,看護婦7人,そのほかに看護助手が8人いる。ここでは,妊産婦指導を徹底し,生まれた赤ちゃんは,ただちに小児科に移され,精密な診察と検査が施される。さらに出産後は無料で赤ちゃんの健康診断に応じている。お産の失敗は二度目に多い。というのは,初産は診察を欠かさず用心するが,二度目には一種の安心感から,それを省略することが多いからだ,と水谷院長は警告する。妊産婦は,いわゆる病人ではない。だから,「第一に誠実,第二に真の意味の親切,そして第三に能率的な診断・治療・指導をすすめてゆきたい」とも語る。しかし,何よりも大切なことは,各自がつねに勉強することだという。助産婦はみんな陽気だ。そして,妊産婦やその家族の中に自然にとけこんでいる。妊産婦の瞳は,信頼と安心の明るい希望に満ちている。
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