Medical Box
病源性好塩菌
高橋 隆一
1
1慶応義塾大学医学部内科
pp.41
発行日 1963年11月1日
Published Date 1963/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202645
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夏の暑さが峠をこして人々がほっと一息するころ,新聞やテレビで食中毒の集団発生がよく報じられるようになります.これまで食中毒の原因となる菌としては,サルモネラ(腸チフス菌,パラチフス菌の菌族)ブドウ状球菌(化膿菌として有名)の2種が多く,食中毒の大部分を占めていました.しかし,最近は病源性好塩菌による中毒が多く,食中毒の7〜8割を占めるといわれています.
好塩菌,ちょっとききなれない名まえです.この菌は名まえのとおり塩分の多い場所,たとえばつけ物,塩からなどの塩分の多い海産物加工品などでよく発育することが知られていましたが,これまでは人間に病気をおこすことはないとされていました.ところが昭和30年8月に横浜で食中毒の集団発生の時に,その原因菌が好塩菌であることがわかりました.これまで塩気の多い食品は腐敗しにくく,まさか食中毒の原因になるとは考えていなかったのに,これでは塩気が多くて,一見腐敗していないとしても安心して食べるわけにはゆかなくなりました.このように食中毒の原因となる好塩菌を従来知られている好塩菌と区別して病源性好塩菌と呼んでいます.ではこの菌は普通どこにいるのでしょうか.その後のこの菌による食中毒の集団発生を地域的にみますと,大平洋岸の水産県に多いことがわかりました.また,原因となる食物は魚,タコ,イカ,貝類などの海産物が大部分であることがわかりました.
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