研究報告
淋疾に関する伝染源発見について
藤倉 喜久夫
1
,
杉山 哲次郞
1
,
幡野 永由
2
,
麻生 和雄
2
,
山田 義男
3
1千葉大学医学部衞生学教室
2千葉大学医学部皮膚泌尿器科教室
3千葉県木更津保健所
pp.49-50
発行日 1953年11月15日
Published Date 1953/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201288
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- 文献概要
戦後我国に於いて内外の特殊な事情により,性病に関する問題が,最も大きな社会問題の一つとしてとりあげられるようになつた。特にその中でも淋疾の罹患率は最も大であり,我国民の公衆衞生上,極めて寒心に耐えない所である。
一般に伝染病防疫の第一段階として採りあげられる問題は,その伝染源対策であり,就中患者及び保菌者の発見確認である。本疾患の患者は外見上健康な者と殆ど変りなく,又その自覚症状も軽微或は皆無であり,自己の患者又は保菌者たることを全く知らないものが相当に多い。更に又本疾患の病原体は他の消化器系伝染病の場合と異り,その培養,鑑別,同定が極めて複雑困難なことのために,直接塗抹染色検鏡検査により容易に発見出来る急性期のものを除いては,その診断は常に確実に行われているものとは限らない。即ち血液寒天,血清寒天,腹水寒天或はその他の合成培地が多くの先人により考案応用せられているが,それらを用いて培養した結果は必ずしも一定しない。甚しき場合は検鏡所見に於いて明かに陽性の症例に於いてすら培養試験陰性に終ることが屡々知られている。このような事情のために,従来確定診断の方法として培養所見の確認という事がとなえられているにも拘らず,実際上はあまり広く行われていないのが実状である。
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