講座
帝王切開と子宮破裂
小畑 英介
1
,
岡田 紀三男
1
1東京浜田病院
pp.19-23
発行日 1963年11月1日
Published Date 1963/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202640
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子宮破裂は母体にとって致命的な疾患であり,産科にたずさわる者のもっとも恐れる重篤な合併症である.そして本症のあるものは不適当な分娩介助はもちろん,人為的操作によっても起こりうるものであって,したがって産科学の進歩とともにある程度は減少せしめうる疾患である.本症は果たして減少しているであろうか.われわれは浜田病院における過去40年間に子宮破裂25例を経験したが,これを年代別に観察してみると一時減少していたものが,最近再び増加の傾向にある.そして一般にかつて多く認められていた加害破裂はむしろ減少して来ているのに対して,帝切瘢痕破裂(前回帝切分娩し,今回妊娠または分娩中帝切瘢痕部の破裂を起したもの)が漸増して来ており文献にてもこの報告がしばしば認められる.この事実は,帝切に対する適応と要約がきびしく制約されていた時代から,化学療法の発達,抗生物質や麻酔の進歩,輸血の普及などにより帝切が比較的容易かつ安全に行ないうる時代への変遷との間に何らかの関係があろうことは推測できる.しかも帝切の数は年々増加の一途をたどっている有様である.そこでわれわれは当院における子宮破裂の成績を各面から検討を加え,ことに子宮破裂の時代的推移を観察し,今後の産科処置に対する反省の一助としたい.
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