母性保健特集講座 妊娠
妊婦の食事指導
沢崎 千秋
1
,
木実谷 康子
2
1日本大学
2元:日本大学病院産婦人科
pp.24-33
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202588
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■正常妊娠の場合の食事指導
正常妊娠とはいうまでもなく婦人の子宮内に,妊卵を宿し,それが成育して,りっぱな成熟児(標準まで育った赤ちゃんで体重3,000g,身長約50cm)となることです.子宮内で育っている赤ちゃんは,おかあさんと一つの肉体です.それがわずか280日の問に3,000gにまで育ちますが、その栄養分は全部これをおかあさんからとっています.そしてその不要物は,これを全部おかあさんのほうへかえしています.そこで,おかあさんのからだのなかでは,妊娠しないときに営まれている新陣代謝に加えて赤ちゃんのための代謝も行なわれているわけですから,からだの隅々まで,各栄養物について,きわめて複雑多岐にわたったうごきがあるわけです.その全貌をつかむことは,現在の医学の段階では,不可能ですが,結論としていえることは,おかあさんの妊娠のための特異な新陳代謝のために,栄養分をおかあさんのからだに余分につぎこまなければならないということです.
つまり妊娠のための特殊な栄養が必要になってくるわけです.そしてもしこのような栄養補給がうまくいきませんと,おかあさんのからだの新陳代謝にいろいろな障害をきたしてきます.またそれが赤ちゃんへも影響して,育ちが悪くなり,弱い子が生まれたり,または流・早産などがおきたり,お産の力が弱ったり産褥の経過が悪くなったり,乳が出にくくなったりします.
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