カレンダー解説
サン・マメスの5月—A.シスレー(1839-99)
pp.93
発行日 1962年4月1日
Published Date 1962/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202320
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作者シスレーは,モネと並んで純粋な状態での印象主義の代表画家である.彼は,その生涯のほとんどを,風景画の制作に終始した.それは,彼が,外光と風と,大気のたたずまいを,画面に表現することを,制作の理想としていたことによるものと思われている.印象主義の作家のほとんどがそうであるように,彼もパリ郊外の小さな町モレに住みついて,その附近の風景を描きつづけた.
「サン・マメスの5月」もその中の1枚である.1896年作といえば,彼の死の3年前.しかも印象派が高らかに勝利の譜を奏でていた頃の作品である.画面にあふれる春の息吹きと,大気を,これほど見事に現わした明るい絵は少ない.そこには,シスレーの平和な生涯を象徴するように,陽の光が新緑を通して無限の詩情を歌いあげている.
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