特集 新生児と未熟児の問題
新生児、未熟児の生理と病理
中嶋 唯夫
1
1日赤産院研究部
pp.19-24
発行日 1962年4月1日
Published Date 1962/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202302
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はしがき
戦後産児制限ということが,敗戦後の経済困難な時代に叫ばれ,身にしみてその必要性が認められたといつて良いかもしれませんが,このことがやがては妊娠の人工中絶を安易な一方法として利用することになり,それから10年余,弊害がぼつぼつ認識され妊娠調節が真剣に考えられつつあるように思われます.この反面産んだ子供だけはなんとしても無事に育てたいという希望が強くなり,未熟児すらも何とかして助けたいという身勝手な反面が世の風潮としても伺われるようです.
さて本論にはいります前にちよつとふり返つてみますと,いつもいわれることですが,母体の分娩前後の死亡率は,諸々の医学水準の向上発達によつて非常に低くなりました.しかし,新生児あるいは未熟児の分娩前後の死亡率は,戦前,戦後ほとんど変化をみません.私どもの産院の死亡率をみても,むしろ戦争中に低下した死亡率が,わずかですが上昇の傾向すら示している状態です.当産院では古くから久慈院長を始め全員が新生児の生理,病理,特に戦後は未熟児についても種々その生理,病理を解明しようと努力しておりますが,年間100体に及ぶ病理解剖,新生児あるいは未熟児の臨床観察的な面は良いのですが,さて研究対称として考えると,ほとんど児に何らの影響も与えないとしても,その両親らの理解が得られないという場面にも遭うことですし,微量定量法の工夫にも,さらに一考を要することも多々あるように思われます.
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