特集 妊娠中毒
母性衛生からみた妊娠中毒症—疫学的アプローチ
辻 達彦
1
1群馬大学医学部公衆衛生学教室
pp.10-14
発行日 1961年9月1日
Published Date 1961/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202188
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本邦の妊娠中毒症対策にはまず疫学的知見の解明が先決である.その主な疫学的所見を列挙すれば次のごとくである.
1)妊娠中毒症死亡には地域差の存在が考えられる.
2)都市と農村に差がある.
3)施設分娩の割合が多くなつても妊娠中毒症死亡が少なくなるとはいいきれない.これは病院,診療所,産院等で出産するものが必ずしも医学的適応によつてきまるものではなく,むしろ社会的条件に支配されることによると解される.その上,妊娠中の養護の内容を具体的に示す指標を欠くことが疫学的判断に不充分である.たとえば重症化して収容されても施設分娩にふくまれ施設内死亡を一層みかけより多くしている可能性がある.この意味で詳しい実体調査がのぞましい.
4)妊娠中毒症と産児の関係は密接で,未熟児が生まれやすく且健康度も低いといえる.
5)妊娠中毒症は周産期死亡を支配する重要な因子であるが施設分娩率と周産期死亡は関係がみとめられない.また妊娠中毒症に起因する周産期死亡はその予防可能性は妊娠中毒症以外のものより高い.
6)妊娠中毒症は成人病ことにその後の高血圧の発現と関係がありそうであるが,資料不足のため疫学的判断がはつきりいえる段階ではないようである.
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