話題・1 母性保健指導"街"に出る
助産婦の新しい職場にたつて
内山 芳子
1
1母子衛生研究会
pp.30-31
発行日 1961年7月1日
Published Date 1961/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202161
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美しく装飾されたデパートの職場は若い女性達の羨望の一つでしよう.今度財団法人母子衛生研究会がお膳立したデパートでの"ママの健康相談室"に参加した私は,これまで助産婦として臨床7年の経験をもつてはいましたものの,"街"に出て,未知の世界にぶつかつてみますと,今さらのように病院の中で考えていたよりも,もつともつと家庭生活に合つた指導をしなければと痛感させられました.臨床の場合には入院,分娩,指導と型の如くそして母子共に元気に退院すればホッと一息,そして退院後1カ月診察に見えた健康な母子をみて一応責任はすべて終り,よし個々の家庭環境は異なつても私達の理想の線が守られ,かつ手近かな指導によつて健康な家庭が築かれているものと考えていた.しかしこの考えはデパートの相談室にでてみて,余りにも通用しないのに驚かされた.先ず指導する相手が稀少なこと.買物にくる母親も娘さん達も一見健康で,結婚,育児,家族計画など総て知りつくして,医師,助産婦などに尋ねることは皆無といつた表情で私達を無視する.時々,この人達は本当に知つているのだろうか,恥しいのだろうか,それとも設備が悪いのか,私達の態度が悪いのかと考えてみたりした.
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