綜説 産科から
新生児死亡—病理的に
山田 耕司
1
1東大産婦人科
pp.16-20
発行日 1960年11月1日
Published Date 1960/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202016
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はじめに
かつてこういう経験があつた.初産婦で男児が産れたが,新生児は生後2日目より嘔吐,そして下血,吐血等を繰り返えし,シヨツク状態となり,生後3日目に新生児メレナのもとに死亡した.臨床的には何んとなく死因がすつきりせず,又たしかにメレナであつたかどうかと云う事で病理解剖(略して日常剖検とも言う)する事になつた.剖検の結果では十二指腸潰瘍がみられ,頻回の吐血・下血はその潰瘍よりのもので,その失血死に依るものである事が分った.ところが,1年後再び第2子(女児)を分娩したが,これが偶々死産に終つてしまつた.その両親にしてみれば2回共子供が死亡しているのはなにか原因があるのではないかと案じて,今度は積極的に第2子の剖検を希望して来た.早速剖検してみると,これは又前回と同様に十二指腸潰瘍がみられ,そこより出血している事が分つたのである.この様に第1子,第2子共に十二指腸潰瘍で死亡すると云うことは非常に稀れな事である.又この例の産科学的な点に就いてみると,その妊娠及び分娩経過において,2回共に分娩予定が20日乃至30日近くおくれていた事や,羊水過少,そして陣痛強度等の共通的な事項がみられている.勿論この様な臨床的事項から必ずしもその胎児への疾患又は影響を推定する事は出来ないが,剖検に依つて,その死因がはつきり分つたと云う事は非常に大事な事である.以上の様な臨床的な事柄と剖検の結果から,一体どの様な事が考えられるだろうか.
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