今月の言葉
妊産婦保健指導と産科臨床の変化
竹内 繁喜
pp.5
発行日 1958年7月1日
Published Date 1958/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201498
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予防医学が発達すると病気がへる事はよく知られています.同様に保健指導が徹底すると産科の異常が少なくなります.7〜8年前アメリカに行つた時,シカゴ大学では5年間も子癇発作の臨床例がないので学生の実地訓練に困つているといつて私等は不思議な思いをしたものです.所がどうでしよう,この状態が現在の日本にも現われて来ました.私共の産院でも子癇発作が少なくなつて助産婦の実習に支障を来たしております.
こうして昔産科では非常に重要で,大切な異常や,疾患が最近段々とへつて参りました.その最も著るしい例は先ず産褥熱でしよう.25年程前,私共が学生から医者になつた当時は,産褥熱は産科の本でも助産婦の教科書でも非常に詳しく書かれ,当時助産婦の検定試験をうけられた皆さん方は,此処の所を丸暗記するのにどんなに苦労した事でしよう.又若い産婦人科医にとつては研究の対称として選ぶのに絶好の題目でした.所が,終戦後ペニシリン等の抗生物質が普及した途端に産褥熱が姿を消しました.けれども私は此を全部抗生物質の効果とは考えたくないのです.矢張り或程度は戦後普及した妊産婦保健指導の結果も関係があると思います.
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