診療室より
無痛分娩への反省
斉藤 正実
pp.38-39
発行日 1957年7月1日
Published Date 1957/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201299
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英国の領土に夜はないと誇り,全世界に号令をかけた英国の黄金時代も過去のことになり,今や,斜陽の老大国として,夢よ,もう一度と,最後の足掻きを続けています.あの黄金時代が築き上げられたのは,ビクトリア女王の治世でした.このビクトリア女王のお産のとき,クロロホルムを使つて女王の苦しみを癒したのが,無痛分娩の始りだということです.クロロホルムのように危険の多い薬をよくも女王に使つたものだと,侍医達の勇気に感心しますが,以来,多くの産科医の努力によつて,今日の進歩を遂げたわけであります.
欧米では,現今,産婦の大部分が何らかの無痛乃至は和痛の処置を受けている様子です.我が日本では,現在,分娩の大多数が,家庭で行われ,開業助産婦の手を煩わして居り,また,大都会では,近年,病院分娩が激増しているとは言つても,その分娩介助は病院勤務の助産婦の努力に依存しており,無痛分娩を積極的に行つている病院は少いようです.
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