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助産婦の業務範囲の擴大
瀬木 三雄
1
1東北大
pp.50-51
発行日 1955年8月1日
Published Date 1955/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200902
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助産婦の業務の根底となつている産科学は日進月歩し,戦前のそれと今日との間には既に大きな差がみられる.しかるに助産婦の医学的面における仕事の内容は余り目立つた進歩がみられない.例えば抗生物質の発見使用は産科学の大変革をもたらした.産褥発熱が致命的であつた時代はすぎ特別な例外を除けば今日医学的の監視の下に於て産褥熱のため死亡例をみる事は殆んどなくなつている.しかるに一方抗生物質の発見が助産介助分娩に如何なる貢献をもたらしたか.発熱した場合医師に連絡すれば医師がこれを注射してなおしてくれるという程度の極めて間接的の影響しか与えていない.
医師は医学の発達を敏速に利用し得る立場にある.しかるに助産婦はこれができない場合が多い.何故か助産婦は自らその進歩を助産婦に可能な方法に於て適用する能力が,当然ないからである.誰か親切な医師がいて,適当な方法を考えてこれを助産婦に教える事が必要であるが,実際には医師の有難さを自らなくする親切気を持つている医師はない.又たとえ,その様な親切気があつたとしても,既存の法規上の慣例等があり,これに多少の手心を加えないと,実行できないことがある.又医師の中には,愼重論者が多く,助産婦がそのような目新しい事をするのは習慣心理に反する故を以て,反対する人も多かろう.
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