原著
腹膜からのペニシリンの吸収,擴散,排泄について
齋藤 達郞
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科學教室
pp.3-7
発行日 1950年1月10日
Published Date 1950/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200296
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緒論
ペニシリンの投與法として理想的には病巣に於ける病原菌に直接ペニシリンの侵襲を加う可きものである.治療經驗に徴するもペニシリンの局所,特に腔内投與は全身投與に比し著しく奏效顯著な場合があり,時には全身投與によわ全く無效の場合も局所投與によつて治癒せしめ得る場合も吾々は經驗している.その理由は,局所投與による場合は,1)直接菌に接觸せしめ得べきパニシリンの濃度を高濃度に自由に選擇出來る.2)從つて菌の蒙る可き運命は只單に靜菌現象に止らず,更に積極的な溶菌,殺菌等の試驗管内に於けると同じAnalogyの現象を期待し得るからであろう.又從來不感性菌として取扱われる大腸菌類にも或程度有效な事が考えられる.なお血清,腹水等のペニシリン不活化因子に關する報告も見られるが,之とてもペニシリン量が高濃度であれば殆んど問題とはならない.數年來慶大産婦人科に於ては,有菌手術である子宮癌根治手術にペニシリンの兩側骨盤結合織創腔内及び腹腔内注入を用いて著效を治めつゝある.之等の統計的事實については既に日本産婦人科學會に發表した.なおその際,腹腔内ペニシリンの消長に關して一部報告したがその後の實験域績を得たのでまとめて報告する.
實驗を分けて次の項とした.
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