講座
産褥悪露について
小林 敏政
1
1都立大塚病院産婦人科
pp.13-17
発行日 1955年7月1日
Published Date 1955/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200878
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悪露は胎盤及び卵膜の剥離によつて出来た子宮体部の創面からの分泌物を主としこれに頸管,膣外陰等からのものが加わるから理論的には子宮よりのもの膣よりのものと分けられるが普通は含めて産褥悪露と云われている.我々産科に関係しているものは産褥子宮の復故の診断に当つて悪露の状態を好個の指針として観察しているにも拘らずその量的関係や排泄状況等もあまりよく検討されておらなかつたのであるが今回私の指導の下に医局の小林茂君が当病院入院産褥婦で詳細に研究したのでこれを某礎として略述し,諸姉の御参考に資することにする.
悪露が分泌される主な部分の子宮についてみると胎児娩出後は子宮膣内表面は胎盤及卵膜が剥離し組織は暴露し,胎盤附着面は殆んど筋肉である.それ故一面に大きな創面で血栓を伴つた血管等があるが,殊に胎盤附着面に多い.ここに白血球の侵入が起り,これが主役となつて健康部と壊死部との分界が行われる.胎盤附着面以外のところをみると最初は脱落膜が極めてうすく表面は粗く凝血,卵膜の残片等が附着するが3日後頃には変性が起り軟化し剥離しやすくなり自然に序々清掃化され,残存した子宮内膜から再生が活溌に起り,3週間位で再生がほぼ完成する.胎盤附着面は初め凹凸不平であるが速に縮小し,2週間後には極めて小となり,殆んど同様の機転で非妊時の状態にもどるが周辺部から進入した内膜で完全に蔽れるのは分娩後6週間であると云われている.
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