講座
産褥悪露について
小林 敏政
1
1都立大塚病院産婦人科
pp.10-13
発行日 1958年1月1日
Published Date 1958/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201397
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産褥悪露は胎盤及び卵膜の剥離によつて出来た子宮体部内面の創面から排泄される分泌物を主とし之に頭管膣等の産道の創傷部分等からの分泌物が加わり,之等を総称して産褥悪露といつて産褥復故が良いか,悪いかという判断の一助として観察されて居るものである.
まず悪露の分泌される主部分についてみると子宮内面は胎児娩出後には子宮腔内面は胎盤及び卵膜が剥離し,組織は暴露し,胎盤附着面は殆んど筋肉である.それ故一面に大きな創面を形成し血栓を伴つた血管等があるが殊に附着面に多い.ここに白血球の侵入が起りこれが主役を演じて健康な部分と壊死の部分との,分界が行われる.胎盤附着面以外の部分は最初は脱落膜が極めて菲薄で表面は徴細に凹凸し,且つ多少出血する.又凝血及び卵膜の残片が附着するけれども,分娩後3日後頃には変性が起り軟化し剥離しやすくなり漸次自然に剥離し,序々に清掃化され分泌物は悪露中に移行する.残つた脱落膜下層(子宮内膜)からは再生が活溌に起り3週間位で再生がほぼ完成する.而して胎盤附着面では初めは凹凸不平で凝血が附着しているが速に縮少し3週間後には極めて小となり,殆んど同様の機転で非妊時の状態に戻るが,周辺部から侵入した内膜で完全に蔽われるのは分娩後6週間位であると云われている.子宮内の過程はこのようであるので,産褥悪露も各個人の産褥経過の如何によつて種々に変るわけであるが,しかし一般的に赤色悪露,褐色悪露,黄色悪露に分けている.
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