今月の献立
貧血について
武藤 靜子
1
1愛育研究所
pp.37-41
発行日 1955年6月1日
Published Date 1955/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200864
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胎生10カ月間に胎児が体内に貯える鉄の量は今まで研究された成績によると294mg〜392mgである.即ち母親は毎日食物としてとり入れる僅かな鉄の中からこれだけのものを胎児の分として確保しているのである.つまり妊娠すると母体は自分の為ばかりでなく胎児の為に余分の鉄が要るようになり,今迄通りの分量の鉄をとつていたのでは結局鉄不足になり,貧血を起してくるのは当然な事であろう.又母親は妊娠すると胎児の為ばかりでなく自分自身の為にも余分の鉄が要るようになる.例えば妊娠10カ月の間に妊婦の血液量は1立も増加する.それに応じて鉄の分量も増加しなければならない筈であるが,しばしば鉄の増加は全血量の増加に追いつかず結局ヘモグロビンの少い薄い血液になつて了う.従つて母親の食餌中に含まれる鉄がたとえ胎児の分だけ余分にあつたとしても母親のこの増大する血液量に相当するだけ更に余分になければここでも又母親は貧血の危険にさらされることになる.勿論,血液殊にその赤血球,更にその中のヘモグロビンを作るには材料として鉄さえあればいいものではない.蛋白質も非常に大切な成分で妊娠中に食餌中の蛋白質が足りない為に貧血を起しているような例も少くない殊に経済的に恵まれないグループにはこの様な例が多いようである.鉄や蛋白質の他にも特に増血に関係の深い栄養素がまだいくつかある.例えば銅,ビタミンB12,葉酸,ビタミンC等々.
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