今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
1.日常的な突発疾患の治療と注意点
[そのほか] 貧血
武井 麟太郎
1
,
竹内 正人
1
,
進 純郎
1
1葛飾赤十字産院産婦人科
pp.480-481
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100243
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1 診療の概要
妊婦貧血,特に妊娠中期から後期にかけてみられるものは,循環血漿量の増加および胎児胎盤での鉄需要の増加に伴う鉄欠乏性貧血である.現代女性は,やせ願望よる食生活の変化から,妊娠前より慢性的な鉄摂取不足状態であることが多く,妊婦貧血の頻度は高くなってきている1).鉄欠乏性貧血は小球性低色素性貧血(ヘモグロビン濃度9.0 g/dl程度の中程度貧血では小球性低色素性を示さないこともある),および血清鉄減少,総鉄結合能増加により診断できるが,ほかの原因疾患による貧血の除外診断はなされなければならない.本稿では,鉄欠乏性貧血の治療につき概説する.
WHOでは,妊婦の貧血をヘモグロビン濃度11.0 g/dl以下としている.しかし本邦において,この基準値を治療開始の値として採用するかは,データ不足もあり賛否両論がある2).ヘモグロビン(Hb)濃度11.0 g/dl以下を基準とすると半数近い妊婦が治療の対象となる.ではヘモグロビン濃度がいくつ以下で,治療を開始するのが適当か.ヘモグロビン濃度11.0 g/dl以下の鉄欠乏性貧血に対して鉄剤投与は,貧血改善には有効だが,母児の予後とは関連がないという報告がある(125例に対するRCT)3).
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