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アメリカ人の衣・食・住物語—(No. 2 食生活の巻)
瀬木 三雄
pp.28-31
発行日 1955年4月1日
Published Date 1955/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200826
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米国人で一番発達の遅れているもの,或は退化したものは味覚ではないかと思う.つまり,米国の食物は意外にまずいのである.米国でも一流の料理店のものであればうまいという人もある.しかし,それにしてもフランス料理や支那料理のようなこまかい味は,米国の料理には欠けている.尤もある人のフランス通信によると,巴里のレストランでは昼はフランス風調味料理を出し,夜は米国人のために,米国風の料理を出すことにしている処があるというのであるから,米国人には米国式の調味が案外合うのかもしれない.この辺の事情については,私はまだよく解決しない疑問がある.
米国の料理がまずい一つの理由は冷凍食品のせいだとされている.米国の都市家庭の料理法は日本と大分違つて来ている.米国には今や缶詰・冷凍食品の時代が来ている.豆を例にとつてみるに,日本では生の豆を買つて来て長い時間かかつて煮てたべる.米国人には豆の煮えるのを気長に待つという忍耐心はないし,又その必要はない.煮た豆は缶詰又は冷凍食品として売り出されておりいずれかを買つて来る.缶詰は日本でもそれ程珍しくはないが,冷凍の方はまだ日本にはない.よく煮てやわらかくなつたグリンピースが,人参などと一緒に四角に氷らせてある.これを買い求めて来て鍋に入れて煮れば,やがて氷はとけ,煮沸するに至る.かくしてものの10分もたたぬ間に食膳に供し得られる.残つた分は冷蔵庫に入れて保存する.
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