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お産に關する伝説(2)
小林 茂雄
pp.45-48
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200649
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安産の神とお乳の神
伝説として世に多くあるものは,安産の神様とお乳の神樣とである.これはもと生殖器神の崇拜から来たもので,いたるところの土地にある.まず安産の神樣として,子安地藏から述べてみよう.このことは「感得靈夢記」にのつている.
延宝5年の春,伊予宇和島の町外れ松ケ鼻に棲める隠士,河野勘兵衞といへる者,一日遊山して酒に醉ひ帰へりてその夜の夢に,一人の老僧現はれて,「われは地藏なり.此の山腹の大樹の土中にて,十方に化遊すること久し.今や此の村に出現せんと欲す.汝土中を穿ちて我が像を出し,堂閣に安置せば人民を守護し,災映を消除せん.又婦女にして信仰すれば,即ち産生を安泰ならしめむ」と,二夜続けて同じ夢を見たので,勘兵衞感奮して,その年の3月23日これを発掘して,松ケ鼻に堂宇を営んで,信仰せしところ,果して靈験いやたかにして,参詣する者引きも切れずという.現今の堂宇は.享保年間の再建ださうです.
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