講座
微弱陣痛
大村 ひさゑ
1
1東京女子医大第二病院
pp.6-9
発行日 1954年7月1日
Published Date 1954/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200636
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微弱陣痛は恐ろしいもの,親子心中のようなもの,子供殺して親が死ぬ.微弱陣痛は人魚か魔女か,弱くて靜かで優しくて,とどのつまりは人殺し.というように銘記していなければならないのが微弱陣痛である.
分娩第1期の微弱陣痛は母兒共に危険を及ぼさないが分娩第2期の微弱陣痛は胎兒を死亡させることがあり,第3期の微弱陣痛は母体を殺すことがある.およそ分娩を取扱う者にとつて胎兒の死亡くらい遺瀬ないものはない.そのうえ母体の死ときては目もあてられない.この時ほど助産という業が情けなく,恨めしく思うことはない.一層自分が死んでしまつた方がましだと思う.かかるが故に微弱陣痛はまた助産者にとつても命と業との賭け代えに価するものである.
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