特集 母の日のために
里親制度
竹下 精紀
1
1厚生省児童局養護課
pp.19-23
発行日 1954年5月1日
Published Date 1954/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200600
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1.里親とは
兒童の養育については家庭に優るものはないといわれるが,色んな事情で家庭で育てることが出来ないために他人に預けて育てて貰う場合がある.このために里親というものが隨分昔から吾国でも存在していた.併し乍らこれが家庭に惠まれない不遇な兒童に対する保護の手段として盛んに活用せられたのは明治以後のことである.その後大正末年から昭和の初年にわたる経済不況の時期を頂点として,その後衰退の一路を辿り,第二次大戰中には昔日の影をみないほどの状況になつた.
第二次大戰後の日本は,戰歿,戰災,引揚その後の経済インフレの昂進は多くの孤兒,浮浪兒を生じ,これらの子供が巷に溢れるという状況を呈した.これらの兒童の保護を含めて一般の兒童の福祉を図るため昭和22年兒童福祉法が制定された.この兒重福祉法は宏庭を離れ又家庭から離した方がいいと思われる兒童の保護について,二つの型を考えている.その一つは養護施設において兒童の保護にあたることであり,他の一つは,他人の家庭において兒童の保護にあたることであり,後者は里親,保護受託者(職親)及び兒童を同居させている者があげられる.ここにおいて里親は,従来各人の委託契約という習慣を,家庭にまきる環境はないという近代兒童福祉事業の理念の下に,公的な組織の中に採り入れられた訳である.
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