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社会の動向
G
pp.57
発行日 1952年12月1日
Published Date 1952/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200239
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第三次世界大戰の不気味な口火になるのではないかと恐れられた朝鮮戰線は膠着状態におちいつたまゝ休戰会談は行き惱みの有樣を続けている。米国防省の一高官は記者会見で「軍当局は大規模かつ過当な目標が出現すれば朝鮮で原子兵器を使用することをトルーマン大統領に勧告する用意がある」と言明してセンセーシヨンをまき起した。世界をあげて原爆兵器の製作に狂弄している現状であるが,その恐るべき慘禍については,日本人以外には適切に知らされていない。米政府刊行の「原爆を受けたときどうすればよいか」の第1頁には「死なないですむものだ」とあるのは,戰爭末期の大本営の強がりに似て膚に粟を生ぜしめるものがある。米婦人雑誌の原爆特集号に対策として「火タタキとバケツとシヤベルを用意し……」とあるのは,日本の戰前,或は戰時中と間違えているのではないかしらというような錯覚はとらえられる。
しかし笑いごとではない,最近米国から帰国したドクターの話によると街には防空壕が掘られ,青年は教練に余念なく,まさに戰前の日本の姿を髣髴するという。尤も戰前の日本には防空壕もないのだつたが…。
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