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短歌のまどい(2)—歌は單純に,明瞭に,素直に
牧 恒樹
pp.60-61
発行日 1952年8月1日
Published Date 1952/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200169
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窪田空穗先生からうかゞつた話しに「歌は自分のみた情景を詠んできて最後に,その情景をみている時の自分の感情を,嬉しいとか,悲しいとか淋しいとかいうふうにつけたせばできる。最初のうちは,この作り方が一番よい。」という意味のことばがありました。あんまり簡單すぎて,「なあーんだ」と失望される方があるかも知れませんが,これは実は長い経験に裏づけされた尊い言葉なのです。気の利いたいい表わし方や,複雑な情緒を三十一文字のなかにこめようとする努力を一概にいけないとは申しませんが,そうしたことは作歌になれ,自分の力も増してくると自然にでてくる工夫なので,初めのうちは幼稚でも何でも,自然に素直にやさしく,自分の気持に忠実に,誰にでも解るようにと心がけることが大切です。
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