連載 わたしたちのメンタルヘルスケア・第4回
医師のメンタルケア・サポート
沖野 和麿
1,2,3
,
富岡 大
1,3
,
真田 建史
1,4
Kazumaro Okino
1,2,3
,
Hiroi Tomioka
1,3
,
Kenji Sanada
1,4
1昭和大学医学部精神医学講座
2昭和大学附属東病院精神神経科
3昭和大学横浜市北部病院メンタルケアセンター
4昭和大学附属烏山病院精神神経科
1Department of Psychiatry, School of Medicine, Showa University
2Department of Neuropsychiatry, Showa University East Hospital
3Mental Care Center, Showa University Northen Yokohama Hospital
4Department of Neuropsychiatry, Showa University Karasuyama Hospital
キーワード:
うつ病
,
バーンアウト
,
メンタルケア
,
医師
,
労働環境
Keyword:
うつ病
,
バーンアウト
,
メンタルケア
,
医師
,
労働環境
pp.1339-1341
発行日 2024年12月10日
Published Date 2024/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203293
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医師のメンタルヘルスとバーンアウト
医師のメンタルケア・サポートにおいて,特にバーンアウトを未然に防ぐことが重要であると考える.バーンアウトは「労働環境に関連した感情的および消耗的な状態」を指す.バーンアウトを定義づける3つの領域として,感情的消耗,離人感,個人的達成度の低さがあり,これらは尺度化され,さまざまな調査で用いられている.バーンアウトの特徴として,医師や教師などの援助専門職に多くみられることが指摘されている1).実際に米国で2014年に実施された調査では,医師の54.4%が少なくとも一つのバーンアウトの症状を有していることが示された.この調査では,バーンアウトが医師の全体的な健康,患者への影響,医療制度に及ぼす影響までもが明らかにされている2).
医師のバーンアウトの多くは,仕事関連のストレス要因から生じる.これは,過度の作業負荷と業務時間,医療記録などの事務負担,非効率的な作業プロセス,複雑な患者関連の決定,ライフワークバランスの不和といった個人の要因に加えて,組織文化やリーダーシップ行動の不一致などの組織要因も影響するため,発症には複数の要因が関係している.医師のバーンアウトは,医療ミスのリスクを高めるだけでなく,受けた医療に対する患者の満足度を低下させ,治療計画の遵守の妨げにもなり得る.そうした状態が続くことで,結果的に医師の離職率の増加,仕事への不満,欠勤の増加,および対人関係の困難にもつながる.実際,バーンアウトを経験する医師の約9%は,過去3か月間に少なくとも一つの重大な医療ミスを犯し,患者対医師の満足度が低い傾向があると報告されている3).
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