VUCAの時代においても……

　今日の本邦における医療・介護環境は，少子高齢化という構造的な問題を背景に，医療・介護の需要増大，そして深刻な働き手不足という課題に直面しています．このような状況のなかで，ロボットや人口知能（artificial intelligence：AI）などのデジタル技術は，これらの課題解決の救世主として期待されています．しかし，これらのデジタル技術を使いこなすためのリテラシーも不可欠です．

　新型コロナウイルス感染症が5類に分類され，社会が本格的に動き出そうとしている最中，能登半島沖を震源とする大地震が発生し，社会に大きなダメージを与えました．2025年には団塊の世代が後期高齢化を迎えるなか，今年度は医療・介護現場では診療報酬，介護報酬，障害者福祉のトリプル改定や医師の働き方改革が待ったなしに行われる予定です．このように医療・介護を取り巻く環境が目まぐるしく変化する，先行きが不安定で予測不可能なVUCA（Volatility：変動性，Uncertainty：不確実性，Complexity：複雑性，Ambiguity：曖昧性）の時代では，質の高い医療・介護サービスの提供において医療・介護技術のみならず，各課題に対しての同時複合的なジレンマに向き合わなくてはなりません．