連載 認知症者・家族をさまざまな観点や立場から支えるコミュニケーションスキル・第10回
療養支援の立場から
田中 博子
1
Hiroko Tanaka
1
1帝京科学大学医療科学部看護学科在宅看護学領域
キーワード:
認知症者
,
療養支援
,
コミュニケーション
Keyword:
認知症者
,
療養支援
,
コミュニケーション
pp.651-658
発行日 2024年6月10日
Published Date 2024/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203144
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はじめに
本邦の2023年の高齢者(65歳以上)人口は3,623万人,総人口に占める高齢者人口率は29.1%と過去最高1),世界一の長寿国となった.認知症の有病率は年齢とともに高まるといわれており,認知症とともに生きる高齢者の人口は今後も増加し,2025年には約700万人,高齢者の約5人に1人に達することが見込まれている.厚生労働省は,認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)2)を策定し,認知症者の意思の尊重のもと,できる限り住み慣れた地域で,自分らしく暮らし続けられる社会の実現をめざしている.
認知症は,アルツハイマー型認知症,血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症が代表的であり,脳の器質的障害により認知機能の低下がみられ,日常生活や社会生活に支障を来す.認知症者が住み慣れた地域で自分らしく暮らしていくためには,家族の理解と協力,専門職者による適切なケアの提供が必要である.ケアを行う際に大切になるのが,その場,その時の雰囲気を含め,その人の状態に合ったコミュニケーションが図られることである.
本稿では,療養支援を行ううえで必要となる,コミュニケーションに関する基礎知識,および認知症者と家族への療養支援に関するコミュニケーションスキルについて論じる.最初に,コミュニケーションに関する基礎知識について触れていく.
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