連載 リハビリテーション診療に役立つ関節MRIの診かた・第2回
肩関節のMRI
坂口 勝信
1
Katsunobu Sakaguchi
1
1埼玉医科大学病院整形外科・脊椎外科
1Department of Orthopaedic Surgery, Saitama Medical University Hospital
キーワード:
肩MRI
,
画像診断
Keyword:
肩MRI
,
画像診断
pp.535-538
発行日 2024年5月10日
Published Date 2024/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203118
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はじめに
若年から壮年における肩関節痛は外傷やスポーツ活動に伴って生じるため,発症誘因がはっきりしていることが多い.一方,中高年では組織の変性に伴って生じるようになるため,誘因なく発症することが多くみられる.古くから日本に疾患名としてなじみがある五十肩は中高年に生じ,誘因なく発症しやがて軽快する経過をたどる.そのため,かつては肩関節の痛みを訴えた中高年の症例のほとんどがX線撮影による画像で五十肩と診断され,自然に治るといった考えのもとに保存治療が選択されていた.しかし,中には症状が軽快しないことを加齢のせいと諦めて,正確な診断がなされないまま薬物療法や物理療法を漫然と継続している症例もあった.
近年は手術治療の進歩もあり,肩腱板断裂に対する鏡視下手術治療は整形外科で行われる手術治療の中で14番目に多い,年間15,000例を数えるようになった1).これは核磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging:MRI)をはじめとする画像診断の進歩が下支えしているものであり,その意義は国民の多くが認知するようになっている.
肩関節のMRIは解剖学的な情報をもとに形態的評価を行うことができ,治療につなげることができる有用な画像検査であるが,静止画像のため機能診断をすることができない.医療従事者は肩の正常解剖を理解し読影するが,責任病巣以外の所見がみられることもあるため,臨床症状と機能診断を優先し補助的な診断として活用することを念頭に置くことが重要である.本稿では,代表的な肩疾患のMRIの診かたを中心に述べていく.
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