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はじめに 森田療法とは
森田療法は森田正馬によって1920年ごろに創始され,日本で発祥・発展してきた精神療法である1-3).試験の時に「あるがまま」,「絶対臥褥」といったキーワードを覚えた人も多いのではないだろうか.社交不安症,強迫症,パニック症などの神経症圏の病態を対象として創始されたが,現在では慢性のうつ,心身症領域などに対象が広がり,学校や職場などの相談の場にも広がりを見せている.森田療法は,不安を異物と捉えて原因を探求しそれを除去するという方向と異なり,不安・恐怖などの感情は人間が生きるうえで必ず生まれる自然なものと捉える観点に大きな特徴がある.そうした本来自然なものである不安を「かくあるべし」という観念・構えでもってねじ伏せよう,排除しようとすることで,注意と悪循環に陥り,不安に「とらわれる」ことを読み解く.不安を「あるがまま」にすることで,自縄自縛の「とらわれ」を離れ,具体的な生活の中で本来持つ「生の欲望」(よりよくありたいという希望)を活かしていくことをめざす.参考に外来森田療法のガイドラインの項目の一覧を載せた(表).
森田療法の,(ⅰ)不安の裏側に「生の欲望」を読み取る,(ⅱ)注意と感覚の悪循環を明らかにする,(ⅲ)「こうあるべき」という構えを扱う,(ⅳ)生活に着目する,といった視点はさまざまな不安の対応に活かすことができる.
本稿では,軽度の認知症高齢者を中心とした認知機能の低下についての不安,認知症高齢者を支える家族への支援,支援者自身が生かす,という視点で森田療法を生かすことを考えていきたい.狭い意味での森田療法についてだけでなく,関連する内容を取り入れた記載となっている.
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