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地域医療構想の現状と課題
2015年に出された地域医療構想の進捗状況が芳しくない.これに対して内閣府や財務省からは厳しい意見が出されている1).筆者はこの地域医療構想に関して,二次医療圏別の機能別病床数の推計を行った.推計の詳細については拙著2)を参照していただければと思う.筆者たちの推計に関してはこれまでもいくつか批判もいただいているが,今後よりよい推計につながるのであれば,それでよいと考えている.当時,筆者らの研究班が地域医療構想に関して厚生労働省から与えられたミッションは「高度急性期,急性期,回復期,慢性期の機能別の患者数を,各地域における性年齢階級別,傷病別の入院受療率を地域間異動や行われている医療行為も勘案して推計すること」というものであった.この課題に応えるうえで最も問題となったのは,機能を何で区分するかであった.急性期,回復期,慢性期を時間概念で考えるのか,あるいは投入される医療資源量で考えるかをデータに基づいて検討した結果,同一傷病における在院日数の施設差,地域差の大きさを考えると,時間概念として捉えることは難しく,結果として1日当たりの投入医療資源量で考えることを選択した.検討に用いたデータはDiagnosis Procedure Combination(DPC)データとNational Date Base(NDB)として収集されているレセプトである.まず,DPCデータを用いて,DPC別に1日当たり出来高換算点数を時系列で検討したところ,ほとんどのDPCにおいて600点前後で変曲点が観察された.急性期を日々医療資源の投入量が変化する時期と考えれば,この変曲点の近辺に急性期と回復期の区分点を設定することが可能である.同様に多くの患者が退院する時期の1日当たり出来高換算点数である225点を回復期と慢性期との区分点として設定した.また,区分点設定に際しては,次の区分への移行期間を考慮すべきであるという診療側からの意見を入れた対応を行っている.
次にNDBを用いて,すべての入院患者について1入院あたりのデータを再構築し,これにDPCロジックを提供し,DPC以外の入院についてもDPCでコーディングを行った.これによって,すべての入院患者が傷病名と行われた医療行為によって分類された.このデータに対して上記の区分を適用し,二次医療圏別・性年齢階級別・DPC別・機能区分別の入院受療率を求め,いくつかの補正を行ったのち,それに社会保障人口研究所所の将来人口推計を行い機能別・DPC別の患者数を推計した(著者注:受療率を求めたことがポイントである).このデータを病床数に転換する(想定する病床利用率で割り戻す)ことで,二次医療圏別の病床数の推計が厚生労働省医政局によって行われた.そして,このデータをもとに各構想区域で,機能別の病床数の検討が行われることになった.さらに2016年以降は病床機能報告制度が導入され,各施設は選択する機能の病床数に加えて,人員体制や保有する医療機器,行った医療行為の詳細を厚生労働省に毎年提出することが義務づけられている.
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